井出創太郎 IDE Sotaro
井出創太郎(IDE Sotaro)1966年東京都生まれ。1991年愛知県立芸術大学大学院美術研究科絵画油画専攻修了。1987年より銅版画を制作。近年は、銅版画を襖、障子の形式で家屋に宿す作品へと展開。
「相倉/その光と襖」(世界遺産合掌造り集落相倉旧山崎家)や「渡部家住宅その光と記憶」(重要文化財 渡部家住宅)、2008年から10年間続けられた「落石計画」(旧落石無送線送信局・北海道根室市落石岬)など、特定の「場」が積み重ねてきた時の記憶を掬いとりながら、自分の想いを重ね合わせ、寄り添う空間を作り上げています。
作品には身近にある草花が使われており、今回は主に紫陽花が用いられています。腐蝕液に版を入れ、時間の流れに伴い変化しつつある一瞬(刹那)をプレスして留める事で、時間と記憶の集積が幾重にも重なりあって作品として昇華されているようです。
作品には全て「piacer d’amor bush」という題がつけられています。「piacer d’amor(愛の悦び)」は幼い頃いつも傍らにあったイタリアの古典歌曲で、作家の記憶全般の暗号となっています。「bush」は、植物が芽生へ、茂り、枯れていく、流れ行く時間と繰り返し、めぐりゆく時間が表現されています。一貫して時間、記憶のモチーフで在り続けています。




art project


落石計画 Ochiishi plan
「落石計画」は、2008年より毎夏続けられている北海道根室市の落石岬で始まった、井出創太郎と高浜利也によるアート・プロジェクト。
舞台となるのは、1908年に開設され、かつて北太平洋の通信拠点として機能した旧落石無線送信所。
プロジェクトの中核となる作品は、建物内部に制作された対話空間「茶室」。
人と人をつなぐ中継役となり、外部との通信を担っていた旧落石無線局の建物に、茶室という形式を用いて、究極にプライベートな対話空間を現出させています。
このようにアートを介して、「時」や「場」をつなぐ行為は、自己とアートの関係性を問うだけでなく、東京への一極集中(あるいは地方の疲弊)が進むわが国における脱中心的な文化の発信、コミュニケーションのあり方の可能性を問う実験的プロジェクトでもあります。



