共鳴する刻―木口木版画の現在地
会期:2020年07月04日[土]−2020年09月06日[日]
会場:CCGA現代グラフィックアートセンター(福島県須賀川市塩田宮田1)
[出品作家]
小川 淳子
OGAWA Junko
栗田 政裕
KURITA Masahiro
齋藤 僚太
SAITO Ryota
田中 彰
TANAKA Sho
二階 武宏
NIKAI Takehiro
野口 和洋
Noguchi Kazuhiro
林 千絵
HAYASHI Chie
戸次 祥子
BEKKI Shoko
松岡 淳
MATSUOKA Atsushi
三井田 盛一郎
MIIDA Seiichiro
三塩 佳晴
MISHIO Yoshiharu
若月 陽子
WAKATSUKI Yoko
CCGA現代グラフィックアートセンターは2020年に開館25周年を迎えるにあたり、記念展として「共鳴する刻[しるし]―木口木版画の現在地」を開催いたします。本展は13人の現代作家が手がけた作品により、木口木版のいまを展覧します。繊細で詩的な画面を描き出す彼らの刻線は、作家の精神と物質としての版木が出会い、共鳴することで生まれる世界の痕跡ともいえるでしょう。
展覧会には、日本の現代木口木版画の先駆である日和崎尊夫の作品や、明治時代に日本で造られ、活字や木口木版画の印刷に使われたアルビオン・プレス型平圧印刷機なども出品されます。また、「福島」をテーマとした作品の競作も展示されます。会期中に限り会場のショップで購入可能です。尚、柄澤齊作品「肖像L 関根正二」は本サイト及びプチボワでもご購入頂けます。
柄澤齊 KARASAWA Hitoshi
商品がありません
肖像L 関根正二
2020年
木口木版画
限定70部(草冠の漢字70で表記)
イメージサイズ 183×125mm
作品シート価格 65,000円(税別)
現物はプチボワでもご覧頂けますので
お気軽にお声がけ下さい。
版画集『方丈記』は作者が自認する代表作で、現代木口木版の先駆者、日和崎尊夫に捧げられている。それをメインの出品作とすることにためらいはなかったが、「福島」をテーマとした競作になにを彫るべきか、しばらく悩んだ。
明治期この国に伝わった木口木版のエポックとなる『磐梯山噴火真図』(1888)にならって磐梯山を彫ろうか、いや、やはり原発事故を取り上げなければ………と決めあぐねていたとき、生誕120年、没後100年にあたる《関根正二展》が福島県立近代美術館で開かれた。観に行き、その場で関根正二の肖像を彫ろうと決めた。
関根正二は1899年いまの白河市に生まれ、1919年、世界的に流行したスペイン風邪で早世している。福島へ行ったのは昨年10月。作品を観賞していたときにはそれから半年も経ずに新型ウィルスが流行するなど想像もできなかった。100年という時間になにほどかの因縁をおぼえずにいられない。
ほぼ50年まえから意中の人物をテーマに「肖像シリーズ」と呼ばれる木口木版を創りつづけ、今回の肖像ははからずもその50作目となる。関根正二の作品から受けるあの「神秘の光」ともいうべき感覚に想いを添わせて彫り進めたけれど、いままた世界に蔓延して先の見えない疫病の翳が、版を彫る手に思わず知らず相乗してしまったかもしれない。しばらく寝かせてステートを変え、表情をもっと優しいものにできたらと考えている。
《共鳴する刻―木口木版の現在地》展図録より
関根正二(1899年福島県生まれ)大正時代に活動し、20歳の若さでこの世を去った画家。
9歳で上京し深川に居を移す。15歳のとき、後に浮世絵師として名を馳せる幼馴染の伊東深水の紹介で印刷会社に勤務。16歳で描いた《死を思ふ日》でデビューを果たす。19歳のとき、《信仰の悲しみ》《姉弟》《自画像》で第5回二科展の新人賞に相当する樗牛賞を受賞。
鮮烈な朱色は「関根のヴァーミリオン」と称され、評価を確立しました。しかし翌年6月、絶筆《慰められつゝ悩む》を遺し、病のためその短い生涯を閉じることとなります。現存する作品は少ないですが、彼の代表作である「信仰の悲しみ」は日本の近代洋画史を代表する傑作の一つと評され、2003 年に重要文化財の指定を受けています。
柄澤齊 KARASAWA Hitoshi
1950 栃木県日光に生まれる
1971 日和崎尊夫に木口木版を学ぶ
1974 創形美術学校研究科版画課程修了
1992 書物や標本を用いたボックス・オブジェの制作を始める。
1993 印刷と出版の工房「梓丁室」を開設、オリジナル版画集、詩画集など自主刊行を始める。
1994 エッセイ集『銀河の棺』(小沢書店)刊行
1996 全版画作品を収めたカタログ・レゾネ『柄澤齊木口木版画集1971-1996』(阿部出版)刊行。
1997 墨と和紙とパネルによる作品を作り始める。
2002 長編小説『ロンド』(東京創元社)刊行。
新聞小説『鉄塔家族』(佐伯一麦小説、日本経済新聞夕刊)の挿絵を担当。
2003 『ロンド』で第17回下野文学大賞受賞。
2004 「梓丁室」から版画入り冊子『SHIP』の隔月発行を始める
11月から新聞s小説『虹の彼方』(小池真理子小説、毎日新聞朝刊)の挿絵を担当
2006 栃木県立美術館、神奈川県立近代美術館(鎌倉館)で回顧展が開催される
2007 11月から新聞小説『Strawberry Fields』(小池真理子小説、読売新聞朝刊)の挿絵を担当
主な展覧会
1973 1972-86年 版画協会展新人賞
1987 「現代の版画1987」渋谷区立松濤美術館
1990 「版画の表現500年展」町田市立国際版画美術館
1991 「箱の世界THE WORLD OF BOX」水戸芸術館
1992 「本の宇宙ー詩想をはこぶ容器」栃木県立美術館
1993 「日本の木口木版ー明治から今日まで」板橋区立美術館
1994 「死にいたる美術ーメメント・モリ」町田市立国際版画美術館、栃木県立美術館
1998 「『日本画』純枠と越境ー90年代の日本の美術」栃木県立美術館
1999 「日本の版画1945ー1999」町田市立国際版画美術館
「メディテーションー真昼の瞑想90年代の日本美術」栃木県立美術館
2000 「顔ー絵画を突き動かすもの」国立西洋美術館、京都国立近代美術館
2001 「本という美術ー大正期の装幀から現代のオブジェまで」うらわ美術館
「詩画集に見る版画の表現」黒部市美術館
2002 「線の迷宮ー細密版画の魅力」目黒区美術館
2004 「木でつくる美術」群馬県立館林美術館
2005 「肖像ー柄澤齊展」小杉放菴記念日光美術館
2006 柄澤齊展」栃木県立美術館、神奈川県立近代美術館(鎌倉館)
2007 「天体と宇宙の美学」滋賀県立近代美術館
2008 「小宇宙への情熱 美浦康重版画コレクション展」神奈川県立近代美術館(鎌倉館)
2010 「湯川成一と湯川書房ゆかりの美術家たち」ギャルリプチボワ(大阪)
2012 「第1回 1980年代作品を中心に」ギャルリプチボワ(大阪)以降 毎年個展を開催
2014 「ノスタルジー&ファンタジー 現代美術の想像力とその源泉」国立国際美術館(大阪)
パブリック・コレクション
東京国立近代美術館、国立国際美術館、神奈川県立近代美術館、栃木県立美術館、埼玉県立近代美術館、群馬県立館林美術館、高知県立美術館、福島県立美術館、目黒区美術館、練馬区立美術館、町田市立国際版画美術館、新潟市美術館、いわき市立美術館、郡山市立美術館、うらわ美術館、横浜美術館、茅ヶ崎市美術館、小杉放菴記念日光美術館、印刷博物館、宮崎県総合博物館、西宮市大谷記念美術館、東京オペラシティアートギャラリー